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目を開けてしまったら恐怖で歌えなくなってしまう気がしたので、
目を閉じたまま歌い続けていると、さっきまでの焦燥感は消えていこうとしていた。

少し冷静さを取り戻したところで、夏の海で自殺志願者にクリスマスソングを贈るという非日常的行為に、
ついに自分もおかしくなってしまったのか、いやこれは夢だ、ただの夢だとゆっくり目を開けた。 

七瀬は私のほうに少しずつ近づいている。あと少しで手が届くと思った私は海底を蹴り、
水を掻きながら彼のところまで辿り着くともう足がつかないので、彼の肩に掴まった。

すると彼は私の背中に手を回し強く抱き寄せた。
私以上に震えている。彼は片手で私の頭を撫で、自分の首元に当てるとしばらく動かなかった。

「あったかい。」

七瀬がそう呟くと、高波が押し寄せた。

私の視界は小さな白い泡に包まれ腕が海の底についたり空中に放り出された。

息ができなくなり大量の海水を飲んで一瞬視界が真っ白くなった。

気を失ったかと思ったけれど、気づいたときには浅瀬に流されていた。

しばらく放心状態でぼうっと海を見つめていたが、海藻が肩や足に絡まりついていることに気づき、あまりの気持ち悪さに悲鳴を上げ立ち上がった。

頭から水を被ったせいで乱れた髪を一度海水に潜って直し、
目が焼けるように痛んだが無理やりに何度も瞬きをして彼も無事かどうか顔を上げた。

目前はぼんやりとかすみ、はっきりとは見えないが、
彼は浅瀬で四つん這いになってむせている声が聞こえた。